織物
二風谷アットゥㇱ
にぶたにあっとぅし
北海道平取町二風谷で作られるアイヌ民族伝統のオヒョウ樹皮繊維の織物。
History
歴史
二風谷アットゥㇱは北海道沙流郡平取町二風谷地区に伝わるアイヌ民族の伝統的な樹皮衣である。アイヌの人々は古来よりオヒョウニレの内皮繊維から衣服を織っており、その歴史は数百年以上に及ぶ。江戸時代には松前藩との交易品としても重要な役割を果たし、本州にも渡った。北海道の厳しい自然環境の中で培われた知恵と技術の結晶であり、アイヌの精神世界を映す文様が施される。近代化と同化政策により一時は衰退の危機に瀕したが、地域の保存会や工芸家の尽力により技術が継承されてきた。2013年に国の伝統的工芸品に指定され、アイヌ文化を代表する織物として国内外から高く評価されている。
Technique
技法
二風谷アットゥㇱの原料は主にオヒョウニレの内皮繊維である。初夏に樹皮を採取し、沢の水に数週間浸けて発酵させた後、繊維を丁寧に剥がして細く裂き、指先で撚りをかけながら糸を績む。績んだ糸を腰機(いざり機)にかけ、経糸と緯糸を交差させて平織りに織り上げる。織り上がった素朴な風合いの布地には、アイヌ文様と呼ばれる独特の刺繍や切伏せ(アップリケ)を施す。モレウ(渦巻文)やアイウシ(棘文)などは魔除けの意味を持ち、衣服の開口部に配置される。全工程が手作業で行われ、自然への感謝と敬意が込められた布である。
Process
制作工程
全6工程
- 1
樹皮採取
初夏にオヒョウニレの樹皮を採取し、沢の水に数週間浸けて発酵させ、内皮の繊維を剥がしやすい状態にする
- 2
繊維精製
発酵した樹皮から内皮繊維を丁寧に剥がし取り、水洗いして不要な部分を除去した後に天日で乾燥させる
- 3
糸績み
乾燥した繊維を細く裂き、指先で撚りをかけながら一本一本繋いで長い糸に績んでいく根気のいる手作業を行う
- 4
機織り
績んだ糸を腰機(いざり機)にかけ、経糸と緯糸を交差させて平織りに織り上げ、素朴な風合いの布地を作る
- 5
文様施し
織り上がった布地にアイヌ文様の刺繍や切伏せを施し、モレウやアイウシなどの魔除けの意味を持つ模様を衣の開口部に配する
- 6
仕立て
文様を施した布を裁断し、伝統的な衣服の形に縫い合わせて仕上げる。全工程が手作業で行われる
Artisans
この工芸を紡ぐ人々
萱野 ミヨ
伝統工芸士
萱野アットゥㇱ伝承館
北海道平取町二風谷に生まれ育ち、アイヌの祖母からオヒョウの樹皮を用いた織物の技術を継承。六十年以上にわたりアットゥㇱの制作に携わり、アイヌ文様の意味と技法の記録・保存にも尽力してきた。
制作哲学
森の恵みをいただき、先祖から受け継いだ文様に祈りを込めて織る。一枚の布が、アイヌの魂と自然への敬意を伝える。
“「樹皮を剥ぐとき、木に感謝する。その気持ちがなければ、本当のアットゥㇱは織れません。」
関根 摩耶
若手作家
札幌市出身のアイヌの血を引く若手織物作家。大学でアイヌ文化を研究した後、二風谷に移り住みアットゥㇱの技法を学ぶ。SNSを通じてアイヌ工芸の魅力を発信し、国内外で展示活動を行っている。
制作哲学
アットゥㇱを織ることは、途切れかけた物語を紡ぎ直すこと。現代に生きるアイヌとして、布を通じて文化を未来へつなぐ。
“「私が織る一本一本の糸は、先祖と未来の子どもたちをつなぐ橋です。」
FAQ
よくある質問
二風谷アットゥㇱとは何ですか?▼
北海道平取町二風谷で作られるアイヌ民族伝統のオヒョウ樹皮繊維の織物。
二風谷アットゥㇱの産地はどこですか?▼
二風谷アットゥㇱは北海道で生産されている織物です。
二風谷アットゥㇱの技法・特徴は?▼
二風谷アットゥㇱの原料は主にオヒョウニレの内皮繊維である。初夏に樹皮を採取し、沢の水に数週間浸けて発酵させた後、繊維を丁寧に剥がして細く裂き、指先で撚りをかけながら糸を績む。績んだ糸を腰機(いざり機)にかけ、経糸と緯糸を交差させて平織りに織り上げる。織り上がった素朴な風合いの布地には、アイヌ文様と呼ばれる独特の刺繍や切伏せ(アップリケ)を施す。モレウ(渦巻文)やアイウシ(棘文)などは魔除けの意味を持ち、衣服の開口部に配置される。全工程が手作業で行われ、自然への感謝と敬意が込められた布である。
二風谷アットゥㇱはどこで購入・体験できますか?▼
北海道の産地工房・直売所や、全国の百貨店・専門店でご購入いただけます。 産地では制作体験ができる工房もあります。北海道の工芸品については北海道の伝統工芸品一覧もご覧ください。