織物
本場大島紬
ほんばおおしまつむぎ
鹿児島県奄美大島で生産される絹織物。泥染めと精緻な絣模様が特徴。
History
歴史
本場大島紬は鹿児島県の奄美大島を発祥とする絹織物で、約1300年の歴史を持つとされる。奈良時代には既に朝廷に献上された記録があり、日本最古の紬のひとつに数えられる。江戸時代には薩摩藩の厳格な管理下で高級織物として発展し、「紬の女王」と称される格別の地位を築いた。明治以降は鹿児島市でも生産が始まり、産地が二箇所に広がった。泥染めによる独特の深い黒褐色と精緻を極めた絣模様が最大の特徴であり、1975年に国の伝統的工芸品に指定された。世界三大織物のひとつにも数えられ、その芸術性と技術力は国際的にも高い評価を得ている。
Technique
技法
本場大島紬は締機(しめばた)による絣加工と泥染めが最大の特徴である。まず精密な図案に基づき絹糸を締機で織り締めて防染し、車輪梅(テーチ木)の煮汁で数十回にわたり染めた後、奄美の泥田に浸けて泥染めを行う。車輪梅に含まれるタンニンと泥中の鉄分が化学反応を起こし、他では得られない深い黒褐色が生まれる。この煮染めと泥漬けの工程を何十回も繰り返す。締機を解いて現れた精密な絣糸を高機にかけ、経緯の絣を一つ一つ針先で合わせながら手織りする。一反に数十万もの交差点で絣を合わせる、世界最高水準の精緻さを誇る織物である。
Process
制作工程
全7工程
- 1
図案設計
精密な絣模様の図案を方眼紙に描き起こし、締機で織り締める際の配列と経緯の絣合わせ位置を計算する
- 2
締機加工
図案に基づき絹糸を締機で織り締めて防染し、染色後に解いた際に精密な絣模様が現れるよう加工する
- 3
車輪梅染め
車輪梅(テーチ木)の幹や根を煮出した染液に糸を数十回にわたり繰り返し浸して、タンニン成分を十分に含ませる
- 4
泥染め
車輪梅で煮染めした糸を奄美の泥田に浸し、タンニンと泥中の鉄分の化学反応で他に類のない深い黒褐色を発色させる
- 5
絣解き
煮染めと泥染めを何十回も繰り返した後、締機を解いて精密な絣模様が施された糸を取り出し整経する
- 6
絣合わせ
高機に経糸を張り、経緯の絣を一つ一つ針先で合わせながら数十万の交差点で正確に模様を揃えて手織りする
- 7
仕上げ
織り上がった反物を湯通しして糊を落とし、検反で精密な絣模様の仕上がりを確認して製品とする
Artisans
この工芸を紡ぐ人々
前田 武雄
伝統工芸士
前田大島紬工房
鹿児島県奄美大島に生まれ、泥染めと精緻な絣模様で知られる本場大島紬の制作に五十年以上携わる。テーチ木(車輪梅)の煮汁と泥田を使った独特の染色工程を極め、大島紬の最高峰とされる十二マルキの作品を手がける。
制作哲学
奄美の泥で染めた糸には、島の大地の力が宿る。自然と人間の共同作業から生まれるのが、大島紬の本当の姿である。
“「泥田に糸を浸す瞬間、島の大地と対話しているような気持ちになります。」
中山 唯
若手作家
鹿児島市出身。大学で染色化学を専攻した後、奄美大島に渡り大島紬の世界に入る。泥染めの化学的メカニズムを研究しながら、伝統的な技法に忠実な制作を行い、若い世代への大島紬の魅力発信にも積極的に取り組んでいる。
制作哲学
科学の目で見ても、泥染めの原理は驚くほど合理的。先人の知恵に敬意を払いながら、その技を正確に伝えたい。
“「大島紬は軽くてしなやか。着れば着るほど体に馴染む——その秘密は泥染めの糸にあるのです。」
FAQ
よくある質問
本場大島紬とは何ですか?▼
鹿児島県奄美大島で生産される絹織物。泥染めと精緻な絣模様が特徴。
本場大島紬の産地はどこですか?▼
本場大島紬は鹿児島県で生産されている織物です。
本場大島紬の技法・特徴は?▼
本場大島紬は締機(しめばた)による絣加工と泥染めが最大の特徴である。まず精密な図案に基づき絹糸を締機で織り締めて防染し、車輪梅(テーチ木)の煮汁で数十回にわたり染めた後、奄美の泥田に浸けて泥染めを行う。車輪梅に含まれるタンニンと泥中の鉄分が化学反応を起こし、他では得られない深い黒褐色が生まれる。この煮染めと泥漬けの工程を何十回も繰り返す。締機を解いて現れた精密な絣糸を高機にかけ、経緯の絣を一つ一つ針先で合わせながら手織りする。一反に数十万もの交差点で絣を合わせる、世界最高水準の精緻さを誇る織物である。
本場大島紬はどこで購入・体験できますか?▼
鹿児島県の産地工房・直売所や、全国の百貨店・専門店でご購入いただけます。 産地では制作体験ができる工房もあります。鹿児島県の工芸品については鹿児島県の伝統工芸品一覧もご覧ください。