織物
阿波正藍しじら織
あわしょうあいしじらおり
徳島県で藍染めと独特のしぼ(しじら)を特徴とする綿織物。
History
歴史
阿波正藍しじら織は徳島県で生産される藍染めの綿織物で、江戸時代末期から明治初年にかけて誕生したとされる。その発見は偶然の産物で、海部ハナという女性が雨に濡れて乾いた後の藍染め布に生じた自然な縮み模様の美しさに着想を得て、意図的に経糸と緯糸の張力に差をつけて布面にしぼを出す「しじら織」の技法を考案したと伝えられる。阿波国(徳島県)は日本最大の藍の産地であり、「正藍」の名は阿波産の天然藍のみで染めることを意味する。夏の着物地として肌離れがよく涼感に優れることから全国的な人気を得て、1978年に国の伝統的工芸品に指定された。
Technique
技法
阿波正藍しじら織は阿波産の蒅(すくも)藍で染めた木綿糸を用いる織物である。藍染めの工程では、蒅を藍甕に仕込み、灰汁や石灰を加えて自然発酵させた「藍液」に糸を繰り返し浸す「天然灰汁発酵建て」の伝統技法を用いる。浸染と空気酸化を数十回繰り返して深い藍色を定着させる。織りの最大の特徴は、経糸の一部に張力の異なる糸を配することで、仕上げ後に布面に自然な凹凸(しぼ)が生まれる点にある。このしぼが肌との接触面を最小限にし、通気性に優れた涼しい布地を実現する。藍の濃淡を巧みに使い分けた縞模様が基本意匠。
Process
制作工程
全7工程
- 1
藍建て
阿波産の蒅を藍甕に仕込み、灰汁や石灰を加えて天然灰汁発酵建ての技法で藍液を自然発酵させる
- 2
藍染め
木綿糸を藍液に繰り返し浸し、空気中で酸化させる工程を数十回重ねて深い藍色を定着させる
- 3
糸準備
藍の濃淡を染め分けた複数色の糸を用意し、縞模様の設計に従って経糸と緯糸を分類して揃える
- 4
整経
経糸の一部に張力の異なる糸を意図的に配置しながら整経し、仕上げ後にしぼが生まれる構造を作る
- 5
製織
織機で経糸に緯糸を打ち込み、藍の濃淡を活かした縞模様を織り上げていく
- 6
しぼ出し
織り上がった布を湯に通して仕上げることで、張力差のある経糸の収縮により布面に自然な凹凸が生まれる
- 7
仕上げ
しぼの状態を検品し、幅や長さを整えて通気性に優れた涼感のある織物として最終仕上げを行う
Artisans
この工芸を紡ぐ人々
三木 勝弘
伝統工芸士
三木藍染織工房
徳島県徳島市に生まれ、藍染めとしじら織の家業を継承。阿波藍の「すくも」づくりから染め、織りまで一貫して手がける数少ない職人の一人である。しじら織特有のシボ(凹凸)を美しく出す技法に定評があり、45年以上のキャリアを持つ。
制作哲学
阿波藍の深い青としじらの心地よい肌触りは、日本の夏の原風景。この二つを結びつける仕事に誇りを持っています。
“藍は生きている。その日の気温、湿度で染まり方が変わる。だからこそ毎日が真剣勝負です。
近藤 萌
若手作家
徳島県出身。東京の美術大学でテキスタイルを学んだ後、阿波藍の魅力に改めて気づき帰郷。伝統的なしじら織の技法を学びながら、天然藍染めの濃淡を活かしたモダンなストールやワンピースの制作に挑戦している。
制作哲学
しじら織の涼やかな風合いは、現代のファッションにこそ必要とされている素材だと確信しています。
“藍甕の前に立つと、先人たちと同じ青に向き合っているのだと実感します。
FAQ
よくある質問
阿波正藍しじら織とは何ですか?▼
徳島県で藍染めと独特のしぼ(しじら)を特徴とする綿織物。
阿波正藍しじら織の産地はどこですか?▼
阿波正藍しじら織は徳島県で生産されている織物です。
阿波正藍しじら織の技法・特徴は?▼
阿波正藍しじら織は阿波産の蒅(すくも)藍で染めた木綿糸を用いる織物である。藍染めの工程では、蒅を藍甕に仕込み、灰汁や石灰を加えて自然発酵させた「藍液」に糸を繰り返し浸す「天然灰汁発酵建て」の伝統技法を用いる。浸染と空気酸化を数十回繰り返して深い藍色を定着させる。織りの最大の特徴は、経糸の一部に張力の異なる糸を配することで、仕上げ後に布面に自然な凹凸(しぼ)が生まれる点にある。このしぼが肌との接触面を最小限にし、通気性に優れた涼しい布地を実現する。藍の濃淡を巧みに使い分けた縞模様が基本意匠。
阿波正藍しじら織はどこで購入・体験できますか?▼
徳島県の産地工房・直売所や、全国の百貨店・専門店でご購入いただけます。 産地では制作体験ができる工房もあります。徳島県の工芸品については徳島県の伝統工芸品一覧もご覧ください。