織物
羽越しな布
うえつしなふ
山形県と新潟県の県境地域で作られるシナノキの樹皮を原料とした古代織物。
History
歴史
羽越しな布は山形県鶴岡市関川地区と新潟県村上市山北地区にまたがる山間地域で織られる樹皮布で、その歴史は縄文時代にまで遡るとされる日本最古級の織物のひとつである。シナノキやオオバボダイジュの内皮から採った繊維を材料とし、雪深い山間地の人々が自給用の衣料、穀物袋、作業着などの生活必需品として何世代にもわたり織り続けてきた。木綿や絹が普及する以前の古代の布作りの姿を今に伝える「原始布」として極めて貴重な存在である。近代化と生活様式の変化により衰退したが、地域住民の保存活動により技術が辛うじて継承され、2005年に国の伝統的工芸品に指定された。
Technique
技法
羽越しな布はシナノキまたはオオバボダイジュの内皮繊維を原料とする。6月頃に樹皮を採取し、外皮を丁寧に除いて内側の繊維層だけを取り出す。これを沢の水に数日間浸して発酵させ、繊維を柔軟にする。柔らかくなった繊維を細く裂き、指先で撚りをかけながら一本一本繋ぎ合わせて糸を作る「績み」の作業は、冬の農閑期に囲炉裏端で行われる地道な手仕事である。できた糸を地機にかけて手織りで織り上げる。基本的に染色は施さず、樹皮本来の素朴な黄褐色の自然な色合いをそのまま活かす。ざっくりとした質感と独特の風合いが特徴。
Process
制作工程
全7工程
- 1
樹皮採取
6月頃にシナノキやオオバボダイジュの樹皮を採取し、外皮を丁寧に剥いで内皮の繊維層のみを取り出す
- 2
水浸し発酵
取り出した内皮を沢の清水に数日間浸けて自然発酵させ、繊維を柔軟にほぐしやすい状態にする
- 3
繊維績み
柔らかくなった繊維を細く裂き、指先で撚りをかけながら一本一本丁寧に繋ぎ合わせて織り糸を作る
- 4
糸作り
績んだ繊維を撚り合わせて経糸と緯糸に仕立て、織りに必要な長さと強度を持った糸として整える
- 5
整経
織り上がりの幅と長さに合わせて経糸を必要本数揃え、地機に掛けるための準備を整える
- 6
手織り
地機を用いて経糸に緯糸を一本ずつ手作業で通しながら平織りで丁寧に織り上げていく
- 7
仕上げ
織り上がった布を天日で干して乾燥させ、樹皮本来の黄褐色の自然な風合いを活かして仕上げる
Artisans
この工芸を紡ぐ人々
佐藤 文江
伝統工芸士
佐藤しな布工房
山形県鶴岡市に生まれ、祖母の手ほどきでしな布の織りを学ぶ。20代で本格的にしな布の制作を始め、シナノキの皮から糸を績む伝統技法を50年以上にわたり守り続けてきた。国の重要無形文化財の保持団体の一員として、後進の育成にも尽力している。
制作哲学
自然の恵みをそのまま布に変える。シナノキが育つ山と川の力を、一本一本の糸に込めることが私の仕事です。
“しな布は山の命そのもの。木の皮が糸になり、布になる、その過程に自然への感謝が宿るのです。
五十嵐 彩
若手作家
新潟県村上市出身。大学でテキスタイルデザインを学んだ後、羽越しな布の素朴な風合いに魅了され、地元の工房で修業を始めた。伝統的な技法を基盤としながら、現代の暮らしに寄り添うバッグや小物の制作にも取り組んでいる。
制作哲学
古代から続く自然布の魅力を、今の暮らしの中で感じてもらいたい。伝統と日常をつなぐ布を織りたいと思っています。
“しな布に触れると、千年前の人々と同じ手触りを感じられる。それが何よりの贅沢だと思います。
FAQ
よくある質問
羽越しな布とは何ですか?▼
山形県と新潟県の県境地域で作られるシナノキの樹皮を原料とした古代織物。
羽越しな布の産地はどこですか?▼
羽越しな布は山形県で生産されている織物です。
羽越しな布の技法・特徴は?▼
羽越しな布はシナノキまたはオオバボダイジュの内皮繊維を原料とする。6月頃に樹皮を採取し、外皮を丁寧に除いて内側の繊維層だけを取り出す。これを沢の水に数日間浸して発酵させ、繊維を柔軟にする。柔らかくなった繊維を細く裂き、指先で撚りをかけながら一本一本繋ぎ合わせて糸を作る「績み」の作業は、冬の農閑期に囲炉裏端で行われる地道な手仕事である。できた糸を地機にかけて手織りで織り上げる。基本的に染色は施さず、樹皮本来の素朴な黄褐色の自然な色合いをそのまま活かす。ざっくりとした質感と独特の風合いが特徴。
羽越しな布はどこで購入・体験できますか?▼
山形県の産地工房・直売所や、全国の百貨店・専門店でご購入いただけます。 産地では制作体験ができる工房もあります。山形県の工芸品については山形県の伝統工芸品一覧もご覧ください。