工芸材料・工芸用具
伊勢形紙
いせかたがみ
三重県鈴鹿市で生産される型紙。柿渋で加工した和紙に精緻な模様を彫る染色用具。
History
歴史
伊勢形紙は三重県鈴鹿市で生産される染色用の型紙で、その歴史は室町時代にさかのぼるとされる。和紙を柿渋で張り合わせた渋紙に精緻な文様を彫刻する工芸品で、着物の型染めに不可欠な道具として発展した。江戸時代には紀州藩の手厚い保護のもと、白子・寺家地区を中心に型紙産業が隆盛し、全国の染物に使われる型紙のほぼすべてが伊勢で生産された。1983年に伝統的工芸品に指定された。また、重要無形文化財にも指定されている。
Technique
技法
伊勢形紙は美濃和紙を三枚柿渋で貼り合わせた渋紙に、専用の彫刻刀で精緻な文様を彫り抜いて作る。彫りの技法は「突彫り」「錐彫り」「道具彫り」「縞彫り」の四種類に大別される。突彫りは刃先を上下に突いて自由な曲線を彫る技法、錐彫りは半円形の刃で小さな穴を無数に彫る技法、道具彫りは花や菱形など定型の刃物で押し抜く技法、縞彫りは定規に沿って平行な縞を彫る技法である。一枚の型紙に数万の彫りを施す精緻さが求められる。
Process
制作工程
全6工程
- 1
渋紙作り
美濃和紙を三枚重ねて柿渋で貼り合わせ、乾燥と燻蒸を繰り返して丈夫で伸縮しにくい渋紙を作る
- 2
紙の養生
貼り合わせた渋紙を室の中で燻し、さらに天日で干すことを繰り返し、安定した強靭な地紙に仕上げる
- 3
図案写し
染色に用いる文様の図案を渋紙の上に正確に写し取り、彫刻の指針となる下絵を準備する
- 4
文様彫刻
突彫り・錐彫り・道具彫り・縞彫りの四技法を用い、専用の彫刻刀で数万の精緻な文様を彫り抜く
- 5
糸入れ補強
細かい文様が崩れないよう、彫り上がった型紙に絹糸や漆で補強の糸入れを施して強度を保つ
- 6
検品仕上げ
完成した型紙を一枚ずつ検品し、文様の精度や渋紙の状態を確認して染色用の型紙として仕上げる
Artisans
この工芸を紡ぐ人々
南部 芳松
人間国宝(重要無形文化財保持者)
1894年三重県鈴鹿市寺家町生まれ。尋常小学校卒業後、11歳で兄・南部藤吉に弟子入りし突彫りを習得。日本各地を巡り様々な型を研究。1939〜1943年型紙彫刻組合長。戦後1946年に組合を再建し初代組合長に就任。1955年、伊勢形紙突彫りで重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。1960年紫綬褒章、1965年勲五等双光旭日章受章。1976年逝去。
制作哲学
5〜8枚の型地紙を重ね、細い刃先の小刀を手前から奥へ突くように彫り進める突彫りの技法を極めた。刃のわずかな揺らぎが生む独特のあたたかな風合いが特徴で、絵画的な文様表現に優れる。
那須 恵子
伊勢型紙彫師
型屋2110
1982年岐阜県生まれ。8年間印刷会社で商業イラストを制作した後、2010年に伊勢型紙の彫師を志して三重県鈴鹿市に移住。彫りの名人・生田嘉範氏に師事し、伊勢型紙彫刻組合に加入のうえ工房内独立。「型屋2110」として活動。てぬぐい・浴衣・紅型・長板中型・唐紙用型紙・印伝・着尺型・摺り型・小紋型など多様な染色用型紙を制作する。2018年LEXUS NEW TAKUMI PROJECT三重代表に選出。三重県より中堅優秀技能者として表彰。若手女性職人グループ「凛九(りんく)」のメンバーとしても活動している。
制作哲学
型紙が100年先も染め手を支え、型紙で心を伝える。それが伊勢型紙彫師としての目標。
FAQ
よくある質問
伊勢形紙とは何ですか?▼
三重県鈴鹿市で生産される型紙。柿渋で加工した和紙に精緻な模様を彫る染色用具。
伊勢形紙の産地はどこですか?▼
伊勢形紙は三重県で生産されている工芸材料・工芸用具です。
伊勢形紙の技法・特徴は?▼
伊勢形紙は美濃和紙を三枚柿渋で貼り合わせた渋紙に、専用の彫刻刀で精緻な文様を彫り抜いて作る。彫りの技法は「突彫り」「錐彫り」「道具彫り」「縞彫り」の四種類に大別される。突彫りは刃先を上下に突いて自由な曲線を彫る技法、錐彫りは半円形の刃で小さな穴を無数に彫る技法、道具彫りは花や菱形など定型の刃物で押し抜く技法、縞彫りは定規に沿って平行な縞を彫る技法である。一枚の型紙に数万の彫りを施す精緻さが求められる。
伊勢形紙はどこで購入・体験できますか?▼
三重県の産地工房・直売所や、全国の百貨店・専門店でご購入いただけます。 産地では制作体験ができる工房もあります。三重県の工芸品については三重県の伝統工芸品一覧もご覧ください。