織物
弓浜絣
ゆみはまがすり
鳥取県弓ヶ浜地方で生産される綿の絣織物。絵絣の技法による大柄な模様が特徴。
History
歴史
弓浜絣は鳥取県西部の弓ヶ浜半島を中心に生産される綿織物で、江戸時代中期の18世紀頃から織られてきた。弓ヶ浜地方は砂地の土壌で稲作に適さなかったため、代わりに綿花の栽培が盛んに行われた。農家の女性たちが自家栽培の綿から糸を紡ぎ、藍で染めて絣模様を織り込んだのが始まりである。特に絵絣の技法に優れ、鶴亀、松竹梅、宝船、鯛など吉祥を意味する具象的な模様が特徴的で、嫁入り道具や祝い着としても重宝された。明治から大正期に最盛期を迎え、山陰を代表する庶民の絣として広く親しまれた。1975年に国の伝統的工芸品に指定されている。
Technique
技法
弓浜絣は地元産の綿花から紡いだ木綿糸を天然の藍で染め、手織りで織り上げる素朴な綿絣である。最大の特徴は大柄で具象的な絵絣にあり、緯糸の括り技法により鶴、亀、鯛、松、宝船、大黒天などの縁起物を一反の布の中に織り込む。まず方眼紙に図案を描き起こし、緯糸を束ねて模様に該当する部分を一箇所ずつ括り糸で固く縛って防染する。藍染めは天然藍を甕で発酵させた染液に数十回浸染を繰り返し、深みのある藍色に仕上げる。高機で手織りし、絣模様を一段ずつ丁寧に合わせていく。力強く温かみのある絵模様が魅力の庶民の絣である。
Process
制作工程
全7工程
- 1
綿紡ぎ
鳥取県弓ヶ浜地方で栽培された綿花を綿繰り機で種を取り除いた後、糸車を使って丁寧に紡いで木綿糸を作る
- 2
図案設計
鶴、亀、鯛、松、宝船、大黒天などの縁起物を方眼紙に描き起こし、緯糸の括り位置を精密に計算する
- 3
絣括り
図案に基づき緯糸を束ねて模様に該当する部分を一箇所ずつ括り糸で固く縛り、大柄な絵絣の防染処理を施す
- 4
藍染め
天然藍を甕で発酵させた染液に括った糸束を数十回浸染を繰り返し、深みのある藍色に染め上げる
- 5
整経
染め上がった経糸を所定の本数と長さに整え、綜絖と筬に通して高機に仕掛けるための準備作業を丁寧に行う
- 6
絣合わせ
高機で緯糸の大柄な絵絣模様を一段ずつ丁寧に合わせながら手織りし、具象的な絵柄を正確に織り出していく
- 7
仕上げ
織り上がった反物を水通しして糊を落とし、検反を行って絵絣の出来栄えを確認して製品に仕上げる
Artisans
この工芸を紡ぐ人々
足立 清志
伝統工芸士
足立絣工房
鳥取県境港市に生まれ、弓ヶ浜半島に伝わる絵絣の技法を四十年以上にわたり継承。鶴亀や松竹梅、大黒天などの吉祥文様を緯糸の絣で表現する高度な技術を持ち、絵絣の図案設計から織り上げまでを一貫して手がける。
制作哲学
弓浜絣の絵模様には、庶民の祈りと喜びが込められている。その素朴な美しさを、一反一反に心を込めて再現する。
“「絣で絵を織るということは、糸で絵を描くこと。筆の代わりに、括りの技で模様を生み出すのです。」
角 由紀子
若手作家
糸絵工房 ゆき
鳥取県米子市出身。地元の伝統工芸に興味を持ち、弓浜絣の技法を習得。伝統的な吉祥文様に加え、山陰の自然をモチーフにしたオリジナルの絵絣を制作し、暮らしの中で使える絣製品の開発にも力を入れている。
制作哲学
絵絣は物語を織り込む布。見る人が思わず微笑むような、温かい模様を織りたい。
“「弓浜絣の素朴な絵柄には、どこか懐かしさがある。その温かさを大切にしたいのです。」
FAQ
よくある質問
弓浜絣とは何ですか?▼
鳥取県弓ヶ浜地方で生産される綿の絣織物。絵絣の技法による大柄な模様が特徴。
弓浜絣の産地はどこですか?▼
弓浜絣は鳥取県で生産されている織物です。
弓浜絣の技法・特徴は?▼
弓浜絣は地元産の綿花から紡いだ木綿糸を天然の藍で染め、手織りで織り上げる素朴な綿絣である。最大の特徴は大柄で具象的な絵絣にあり、緯糸の括り技法により鶴、亀、鯛、松、宝船、大黒天などの縁起物を一反の布の中に織り込む。まず方眼紙に図案を描き起こし、緯糸を束ねて模様に該当する部分を一箇所ずつ括り糸で固く縛って防染する。藍染めは天然藍を甕で発酵させた染液に数十回浸染を繰り返し、深みのある藍色に仕上げる。高機で手織りし、絣模様を一段ずつ丁寧に合わせていく。力強く温かみのある絵模様が魅力の庶民の絣である。
弓浜絣はどこで購入・体験できますか?▼
鳥取県の産地工房・直売所や、全国の百貨店・専門店でご購入いただけます。 産地では制作体験ができる工房もあります。鳥取県の工芸品については鳥取県の伝統工芸品一覧もご覧ください。