織物
近江上布
おうみじょうふ
滋賀県で生産される麻織物。絣技法と独特の地風が特徴の高級夏用布地。
History
歴史
近江上布は滋賀県東近江市(旧愛知川町・能登川町)を中心に生産される麻織物で、鎌倉時代にはすでにこの地域で麻布が織られていた記録がある。室町時代以降、本格的な産地として発展し、江戸時代には「近江晒」「高宮布」として全国にその名を馳せた。琵琶湖周辺の湿潤な気候は麻糸が切れにくく織りに適しており、鈴鹿山脈から流れ出る清冽な水が晒しの工程に欠かせなかった。こうした自然条件と職人の技術が結びつき、白く美しい上布が生まれた。1977年に国の伝統的工芸品に指定され、絣模様と独自の「しぼつけ」加工によるシャリ感が特徴の夏の高級着尺地として長く愛されてきた。
Technique
技法
近江上布は苧麻や大麻の繊維を用いた麻織物で、主に「型紙捺染(羽根巻き捺染)」と「生平(きびら)」の二つの技法が伝わる。型紙捺染は櫛型の型紙を使って経糸に直接模様を染め付ける技法で、シャープで整った絣模様を効率よく生み出すことができる。生平は苧麻の手績み糸を使った手織りの平織で、最も古い形態を残す技法である。仕上げ工程で行われる「しぼつけ」は近江上布独自の加工で、織り上がった布に機械的に撚りをかけて布面に細かいしぼ(凹凸)を出す。これにより肌離れが良く清涼感のある風合いに仕上がる。琵琶湖の水を使った晒しも重要な工程。
Process
制作工程
全6工程
- 1
原料準備
苧麻や大麻の繊維を手績みして細い麻糸を作り、経糸と緯糸に必要な量と太さの糸を準備する
- 2
型紙捺染
櫛型の型紙を用いて経糸に直接模様を染め付け、シャープで整った絣模様を正確に表現する
- 3
整経
染め上がった経糸を織機に掛けるため、所定の本数と長さに揃えて整経台で正確に準備する
- 4
製織
手機を用いて平織りで丁寧に織り上げ、絣模様が正確に合うよう緯糸の打ち込みを慎重に行う
- 5
晒し加工
琵琶湖の清水を使って織り上がった布を晒し、不純物を取り除いて麻本来の白さと清潔感を引き出す
- 6
しぼつけ
布に機械的な撚りをかけて表面に細かいしぼの凹凸を生み出し、肌離れの良い清涼な風合いに仕上げる
Artisans
この工芸を紡ぐ人々
中村 喜久子
伝統工芸士
中村麻布工房
滋賀県愛荘町に生まれ、祖母と母の姿を見て育ち、自然と近江上布の世界に入った。麻の糸を績み、櫛押絣や型紙捺染の技法で精緻な模様を施す技を50年以上にわたり極めてきた。近江上布伝統産業会館での実演指導も長年務めている。
制作哲学
琵琶湖の清らかな水が育む麻の布は、暑い夏にこそ真価を発揮する。自然素材の心地よさを伝え続けたい。
“近江の風と水が、麻布にこの上ない涼やかさを与えてくれるのです。
藤田 翔平
若手作家
滋賀県出身。繊維工学を学んだ後、地元の伝統産業である近江上布に興味を持ち、工房に弟子入り。麻素材の機能性と伝統的な絣模様の美しさを両立させた現代的な作品づくりに取り組んでいる。SNSでの発信にも力を入れ、若い世代への認知拡大に貢献している。
制作哲学
麻という素材が持つ本来の力を、現代の感性で最大限に引き出したい。
“千年以上愛されてきた近江の麻布には、時代を超える普遍的な魅力があります。
FAQ
よくある質問
近江上布とは何ですか?▼
滋賀県で生産される麻織物。絣技法と独特の地風が特徴の高級夏用布地。
近江上布の産地はどこですか?▼
近江上布は滋賀県で生産されている織物です。
近江上布の技法・特徴は?▼
近江上布は苧麻や大麻の繊維を用いた麻織物で、主に「型紙捺染(羽根巻き捺染)」と「生平(きびら)」の二つの技法が伝わる。型紙捺染は櫛型の型紙を使って経糸に直接模様を染め付ける技法で、シャープで整った絣模様を効率よく生み出すことができる。生平は苧麻の手績み糸を使った手織りの平織で、最も古い形態を残す技法である。仕上げ工程で行われる「しぼつけ」は近江上布独自の加工で、織り上がった布に機械的に撚りをかけて布面に細かいしぼ(凹凸)を出す。これにより肌離れが良く清涼感のある風合いに仕上がる。琵琶湖の水を使った晒しも重要な工程。
近江上布はどこで購入・体験できますか?▼
滋賀県の産地工房・直売所や、全国の百貨店・専門店でご購入いただけます。 産地では制作体験ができる工房もあります。滋賀県の工芸品については滋賀県の伝統工芸品一覧もご覧ください。