金工品
肥後象がん
ひごぞうがん
熊本県で生産される象嵌細工。鉄地に金や銀を嵌め込む精緻な装飾技法が特徴。
History
歴史
肥後象がん(象嵌)は、熊本県に伝わる金属工芸の伝統技法である。その起源は安土桃山時代の16世紀末に遡り、加藤清正が熊本城築城の際に刀装具の製造を奨励したことに始まるとされる。江戸時代には肥後藩主・細川家の庇護のもと、林又七や平田彦三など名工が輩出され、鉄地に金や銀を嵌め込む独自の象嵌技術が完成した。肥後拵と呼ばれる刀装具は武士に愛用され、その重厚で渋い美しさで知られた。1991年に伝統的工芸品に指定され、現在はアクセサリーや装飾品にも応用されている。
Technique
技法
肥後象がんの技法は、鉄の素地に金や銀の細い線や薄板を嵌め込む金属象嵌である。まず鉄板の表面に「布目切り」と呼ばれる細かい交差した溝を鏨(たがね)で刻む。この布目状の溝に金や銀の薄板や線を置き、鎚で打ち込んで固定する。嵌め込まれた金銀は布目の溝に食い込んで強固に密着する。その後、表面を研磨して余分な金属を除去し、鉄地には錆付け処理を施して黒く変色させる。黒い鉄地に金銀の文様が浮かび上がる「重ね象がん」が肥後象がんの最も特徴的な技法である。
Process
制作工程
全6工程
- 1
鉄地製作
素地となる鉄板を製品の形状に切り出し、表面を平滑に整えて象嵌の下地を準備する
- 2
布目切り
鉄地の表面に鏨で縦横に細かい交差した溝を刻み、金銀を嵌め込むための布目状の下地を作る
- 3
図案描き
布目を切った鉄地の上に花鳥や家紋などの図案を描き、金銀を嵌め込む位置を正確に決定する
- 4
象嵌打込み
金や銀の薄板や細い線を図案に沿って鉄地に置き、鎚で打ち込んで布目の溝に食い込ませて固定する
- 5
研磨
表面を砥石や研磨材で丁寧に磨き、余分な金属を除去して金銀の文様を鮮明に浮かび上がらせる
- 6
錆付け処理
鉄地に錆付け処理を施して表面を黒く変色させ、黒い地に金銀が映える肥後象がん独特の美を完成する
Artisans
この工芸を紡ぐ人々
永田 光弘
伝統工芸士
永田象嵌工房
熊本県熊本市に生まれ、肥後象がんの技を45年以上にわたり極めてきた。鉄地に金や銀の細い線を嵌め込む布目象嵌の技法に優れ、刀の鍔をはじめ、アクセサリーや装飾品に武家文化の気品を宿す作品を生み出し続けている。熊本県重要無形文化財の保持者に認定されている。
制作哲学
肥後象がんは武士の美意識から生まれた技。その精神を受け継ぎ、鉄と金銀で描く繊細な美を追求します。
“鉄の地肌に金を嵌める。その静かな緊張感の中に、肥後武士の魂が宿るのです。
村上 凛
若手作家
熊本県出身。美術大学で彫金を学んだ後、地元に伝わる肥後象がんの精緻さと奥深さに魅せられ、伝統工芸士のもとで修業。伝統的な刀装具の技法を学びながら、ブローチやペンダントなど現代的なジュエリー作品にも肥後象がんの技を取り入れている。
制作哲学
肥後象がんの渋く品のある美しさは、現代のファッションにも自然に溶け込む力を持っています。
“金線を一本嵌めるごとに、武家文化の繊細な美意識に触れている気持ちになります。
FAQ
よくある質問
肥後象がんとは何ですか?▼
熊本県で生産される象嵌細工。鉄地に金や銀を嵌め込む精緻な装飾技法が特徴。
肥後象がんの産地はどこですか?▼
肥後象がんは熊本県で生産されている金工品です。
肥後象がんの技法・特徴は?▼
肥後象がんの技法は、鉄の素地に金や銀の細い線や薄板を嵌め込む金属象嵌である。まず鉄板の表面に「布目切り」と呼ばれる細かい交差した溝を鏨(たがね)で刻む。この布目状の溝に金や銀の薄板や線を置き、鎚で打ち込んで固定する。嵌め込まれた金銀は布目の溝に食い込んで強固に密着する。その後、表面を研磨して余分な金属を除去し、鉄地には錆付け処理を施して黒く変色させる。黒い鉄地に金銀の文様が浮かび上がる「重ね象がん」が肥後象がんの最も特徴的な技法である。
肥後象がんはどこで購入・体験できますか?▼
熊本県の産地工房・直売所や、全国の百貨店・専門店でご購入いただけます。 産地では制作体験ができる工房もあります。熊本県の工芸品については熊本県の伝統工芸品一覧もご覧ください。