その他の工芸品
江戸べっ甲
えどべっこう
東京で生産されるべっ甲細工。タイマイの甲羅を加工した装身具や眼鏡枠が代表的。
History
歴史
江戸べっ甲は東京で製作されるべっ甲細工で、江戸時代初期に長崎から伝わったべっ甲加工技術が江戸の地で独自に発展したものである。タイマイ(玳瑁)の甲羅を素材とし、簪や櫛などの髪飾りを中心に製作された。江戸時代中期以降、華やかな町人文化の発展とともに女性の装身具として大きな人気を博し、精巧で意匠を凝らしたべっ甲細工が数多く作られるようになった。現在はワシントン条約によりタイマイの輸入が厳しく規制されており、貴重な素材を大切に活かしながら伝統が受け継がれている。
Technique
技法
江戸べっ甲の製造はタイマイの甲羅を加熱・加圧して接着する「貼り合わせ」技法が基本である。甲羅を熱湯で軟化させ、複数枚を重ねてプレスすることで厚みや模様を自在に調整する。この際、甲羅に含まれるケラチンタンパク質の性質を利用した自然接着により、接着剤を一切使わずに一体化させる。成形後はヤスリや砥石で形を丁寧に整え、磨き粉で丹念に研磨して透明感のある美しい光沢を出す。簪、眼鏡フレーム、帯留めなど多彩な製品が熟練の手仕事で生み出される。
Process
制作工程
全7工程
- 1
甲羅選別
タイマイの甲羅を厚みや色合い、斑紋の美しさで選別し、製作する製品に適した材料を厳選する
- 2
軟化
甲羅を熱湯に浸けて十分に柔らかくし、加工しやすい状態にしてから形を整えやすくする
- 3
貼り合わせ
軟化させた複数枚の甲羅を重ねてプレスし、ケラチンの性質を利用して接着剤なしで一体化させる
- 4
厚み調整
貼り合わせた素材をヤスリで削り、製品の目的に合った均一な厚みと模様のバランスに整える
- 5
成形
ヤスリや砥石を使って簪や眼鏡フレーム、帯留めなどの目的の形に丁寧に削り出して成形する
- 6
研磨
粗い研磨材から徐々に細かい磨き粉へと移行しながら丹念に磨き、透明感のある美しい光沢を出す
- 7
仕上げ
細部の形を整え、金具の取り付けなど最終的な加工を行い、製品としての完成度を確認する
Artisans
この工芸を紡ぐ人々
金子 利治
伝統工芸士
金子べっ甲店
東京都台東区のべっ甲職人の家に生まれ、五代目として技術を継承。タイマイの甲羅を熱と圧力で貼り合わせる「張り合わせ」の技法に秀で、簪・眼鏡フレーム・帯留など幅広い作品を手がける。ワシントン条約による原材料の制約の中で、貴重な素材を無駄なく活かす技術に定評がある。
制作哲学
べっ甲は海が育んだ天然の宝石。その飴色の美しさを最大限に引き出し、持ち主に寄り添う一品を作り続けます。
“二枚の甲羅がぴたりと一枚に融合する瞬間、職人と素材が通じ合ったと感じます。
野口 七海
若手作家
ジュエリーデザインを学んだ後、べっ甲の天然素材としての美しさに魅了され転身。伝統的な簪や帯留の技法を基礎に、現代のファッションに合うアクセサリーを制作。希少な素材だからこそ、一つひとつの作品に特別な価値を込めることを大切にしている。
制作哲学
べっ甲の温もりと透明感は、身に着ける人の肌に自然と馴染む。その唯一無二の魅力を伝えたい。
“自然が作り出した模様の美しさに、人の手で新たな命を吹き込む。それがべっ甲細工の醍醐味です。
FAQ
よくある質問
江戸べっ甲とは何ですか?▼
東京で生産されるべっ甲細工。タイマイの甲羅を加工した装身具や眼鏡枠が代表的。
江戸べっ甲の産地はどこですか?▼
江戸べっ甲は東京都で生産されているその他の工芸品です。
江戸べっ甲の技法・特徴は?▼
江戸べっ甲の製造はタイマイの甲羅を加熱・加圧して接着する「貼り合わせ」技法が基本である。甲羅を熱湯で軟化させ、複数枚を重ねてプレスすることで厚みや模様を自在に調整する。この際、甲羅に含まれるケラチンタンパク質の性質を利用した自然接着により、接着剤を一切使わずに一体化させる。成形後はヤスリや砥石で形を丁寧に整え、磨き粉で丹念に研磨して透明感のある美しい光沢を出す。簪、眼鏡フレーム、帯留めなど多彩な製品が熟練の手仕事で生み出される。
江戸べっ甲はどこで購入・体験できますか?▼
東京都の産地工房・直売所や、全国の百貨店・専門店でご購入いただけます。 産地では制作体験ができる工房もあります。東京都の工芸品については東京都の伝統工芸品一覧もご覧ください。