その他の工芸品
江戸木版画
えどもくはんが
東京で生産される伝統的な木版画。浮世絵の技法を受け継ぐ彫摺技術が特徴。
History
歴史
江戸木版画は東京に伝わる伝統的な木版画技術で、江戸時代の浮世絵版画にその起源を持つ。17世紀後半に菱川師宣が始めた浮世絵版画は、18世紀に鈴木春信が開発した多色摺り(錦絵)の技法によって飛躍的に発展した。葛飾北斎の「冨嶽三十六景」や歌川広重の「東海道五十三次」は世界的に知られ、フランス印象派をはじめ西洋美術にも大きな影響を与えた。現在も絵師・彫師・摺師の伝統的な分業体制が維持され、新作や復刻版が製作されている。
Technique
技法
江戸木版画は「絵師」「彫師」「摺師」の三者による高度な分業体制で製作される。絵師が下絵を描き、彫師が山桜の版木に裏返しに貼った下絵を小刀で精密に彫る。主版(墨版)と色ごとの色版をそれぞれ別に彫り、摺師がバレンを使って一色ずつ手摺りで越前和紙などに摺り重ねていく。見当(けんとう)と呼ばれる位置合わせの印で色ずれを防ぐ。絵具には岩絵具や植物性の顔料を用い、和紙を適度に湿らせてから摺ることで独特の深い色彩と柔らかな質感を実現する。
Process
制作工程
全7工程
- 1
下絵制作
絵師が紙に墨で下絵を描き、構図や人物の表情などを細部まで精密に仕上げて版下を完成させる
- 2
主版彫り
彫師が山桜の版木に下絵を裏返しに貼り、小刀で輪郭線を精密に彫り出して墨版(主版)を作る
- 3
色版彫り
色ごとに別々の版木を用意し、各色の領域を正確に彫り分けて必要な数の色版を制作する
- 4
紙の湿し
越前和紙などの摺り紙を適度に湿らせ、絵具の浸透と発色に最適な水分量に調整する
- 5
墨摺り
摺師が主版に墨を塗り、見当に紙を合わせてバレンで丁寧に摺り、輪郭線を和紙に転写する
- 6
色摺り
色版に岩絵具や植物性顔料を塗り、見当を合わせて一色ずつ順にバレンで手摺りして色を重ねる
- 7
仕上げ乾燥
すべての色を摺り終えた作品を自然乾燥させ、色の定着と紙の伸縮を安定させて完成とする
Artisans
この工芸を紡ぐ人々
吉川 信之
伝統工芸士
吉川版画工房
東京都荒川区で木版画の彫師を務めた祖父の影響を受け、この道に入る。彫師として山桜の版木に極細の線を彫る技術は随一で、浮世絵の復刻から現代作品の版画化まで幅広く手がける。摺師との二人三脚で、江戸木版画の技術の継承と発展に貢献している。
制作哲学
一刀一刀に迷いがあってはならない。版木に向かう時は、絵師の想いを受け止め、彫師としての覚悟を決めて刃を入れます。
“髪の毛一本の細さの線を彫り出す。その緊張感こそが、木版画の彫師を生かし続ける。
平野 光
若手作家
光摺堂
版画芸術を大学で学び、デジタル印刷全盛の時代に敢えて江戸木版画の手法を選ぶ。摺師として修業し、和紙と顔料が生み出す独特の質感と色合いの再現に情熱を注ぐ。現代アーティストとの協業プロジェクトを通じて、木版画の新たな可能性を切り拓いている。
制作哲学
バレンで和紙に色を移す瞬間、版画は機械印刷には不可能な「手の温度」を宿す。
“同じ版木から同じ色は二度と摺れない。だからこそ、一枚一枚が一期一会の作品なのです。
FAQ
よくある質問
江戸木版画とは何ですか?▼
東京で生産される伝統的な木版画。浮世絵の技法を受け継ぐ彫摺技術が特徴。
江戸木版画の産地はどこですか?▼
江戸木版画は東京都で生産されているその他の工芸品です。
江戸木版画の技法・特徴は?▼
江戸木版画は「絵師」「彫師」「摺師」の三者による高度な分業体制で製作される。絵師が下絵を描き、彫師が山桜の版木に裏返しに貼った下絵を小刀で精密に彫る。主版(墨版)と色ごとの色版をそれぞれ別に彫り、摺師がバレンを使って一色ずつ手摺りで越前和紙などに摺り重ねていく。見当(けんとう)と呼ばれる位置合わせの印で色ずれを防ぐ。絵具には岩絵具や植物性の顔料を用い、和紙を適度に湿らせてから摺ることで独特の深い色彩と柔らかな質感を実現する。
江戸木版画はどこで購入・体験できますか?▼
東京都の産地工房・直売所や、全国の百貨店・専門店でご購入いただけます。 産地では制作体験ができる工房もあります。東京都の工芸品については東京都の伝統工芸品一覧もご覧ください。