その他の工芸品
長崎べっ甲
ながさきべっこう
長崎県で生産されるべっ甲細工。タイマイの甲羅を貼り合わせて作る装身具が代表的。
History
歴史
長崎べっ甲は長崎県長崎市で製作されるべっ甲細工で、安土桃山時代の16世紀後半にポルトガルやオランダとの南蛮貿易を通じてべっ甲加工技術が伝来したのが始まりとされる。江戸時代を通じて長崎は日本唯一の西洋貿易港として栄え、東南アジアから輸入されるタイマイの甲羅を用いたべっ甲細工の一大産地として発展した。簪や櫛などの髪飾りのほか、眼鏡フレームやブローチなど多彩な製品が作られ、1982年に伝統的工芸品に指定されている。
Technique
技法
長崎べっ甲の製造は、タイマイの甲羅を熱湯で軟化させて柔らかくし、複数枚を重ねて圧着する「張り合わせ」技法が基本である。甲羅に含まれるケラチンタンパク質が熱と圧力により融合し、接着剤を一切使わずに一体化する。張り合わせた素材をヤスリや鑢で丁寧に削り出し、目的の形に精密に成形する。磨きの工程では粗い砥石から始めて徐々に細かい研磨剤に移り、最終的に鹿の角の粉で磨いて透明感のある美しい光沢を出す。飴色の地に黒い斑紋が浮かぶ独特の美しさが長崎べっ甲の魅力である。
Process
制作工程
全7工程
- 1
甲羅選別
タイマイの甲羅を色合いや厚み、斑紋の美しさで厳選し、製品の種類に合った材料を準備する
- 2
軟化処理
甲羅を熱湯に浸して柔らかくし、加工に適した柔軟な状態にするために十分に温める
- 3
張り合わせ
軟化した複数枚の甲羅を重ねて熱と圧力で圧着し、ケラチンの融合で接着剤なしに一体化させる
- 4
削り出し
張り合わせた素材をヤスリや鑢で丁寧に削り出し、目的の製品の形に精密に成形していく
- 5
粗研磨
粗い砥石で成形した製品の表面を研磨し、大まかな傷や凹凸を取り除いて滑らかにする
- 6
仕上げ研磨
徐々に細かい研磨剤に移行し、最終的に鹿の角の粉で磨いて透明感のある美しい光沢を引き出す
- 7
金具仕上げ
必要に応じて金具や留め具を取り付け、製品全体の品質と飴色の斑紋の美しさを最終確認する
Artisans
この工芸を紡ぐ人々
川口 長次郎
伝統工芸士
川口べっ甲本舗
長崎市で代々べっ甲細工を営む家に生まれ、六代目として技を継ぐ。江戸時代から続く長崎べっ甲の伝統技法を守り、特に貼り合わせと磨きの技術に秀でる。簪・ブローチ・眼鏡フレームなどを手がけ、長崎の出島文化を色濃く残す作風が特徴的である。
制作哲学
長崎は海外文化の窓口であった街。その歴史を背負い、和と洋が融合した長崎べっ甲の独自性を守り続けます。
“タイマイの甲羅一枚一枚に異なる表情がある。その個性を読み取る眼こそが職人の命です。
山口 彩乃
若手作家
彩甲工房
長崎市出身。宝飾デザインを学んだ後、地元の伝統工芸であるべっ甲細工に回帰。限られた素材だからこそ生まれる希少価値と天然の美しさに魅了され、現代的なジュエリーとしてのべっ甲作品を制作している。サステナビリティの観点からも、天然素材の魅力を発信している。
制作哲学
希少な素材だからこそ、一切の無駄なく、最大限の美しさを引き出す。それが素材への敬意です。
“長崎の光に透かしたべっ甲の飴色は、世界のどんな宝石にも負けない美しさだと思います。
FAQ
よくある質問
長崎べっ甲とは何ですか?▼
長崎県で生産されるべっ甲細工。タイマイの甲羅を貼り合わせて作る装身具が代表的。
長崎べっ甲の産地はどこですか?▼
長崎べっ甲は長崎県で生産されているその他の工芸品です。
長崎べっ甲の技法・特徴は?▼
長崎べっ甲の製造は、タイマイの甲羅を熱湯で軟化させて柔らかくし、複数枚を重ねて圧着する「張り合わせ」技法が基本である。甲羅に含まれるケラチンタンパク質が熱と圧力により融合し、接着剤を一切使わずに一体化する。張り合わせた素材をヤスリや鑢で丁寧に削り出し、目的の形に精密に成形する。磨きの工程では粗い砥石から始めて徐々に細かい研磨剤に移り、最終的に鹿の角の粉で磨いて透明感のある美しい光沢を出す。飴色の地に黒い斑紋が浮かぶ独特の美しさが長崎べっ甲の魅力である。
長崎べっ甲はどこで購入・体験できますか?▼
長崎県の産地工房・直売所や、全国の百貨店・専門店でご購入いただけます。 産地では制作体験ができる工房もあります。長崎県の工芸品については長崎県の伝統工芸品一覧もご覧ください。